2023年2月4日土曜日

『映画大好きポンポさん』-理屈が立たない

 評判が良いらしい作品なので観ておこうと。

 アニメーションの質は高かったし、ポンポさんのキャラクターも魅力的ではあるのだが、作品全体としては満足できなかった。

 「ヒロインが魅力的に撮れれば映画は成功」という台詞が劇中にあるにもかかわらず、劇中劇の主演女優が魅力的ではない。どういうわけだか、声優があまりに大根でこれは完全にキャスティングのミスなのだが、物語自体も、シンデレラガールとしてのヒロインがどういう魅力を持っているのか、ちっとも描けていないのだ。単に可愛い女の子の「絵」を描くことはできる。このヒロインはそれ以上ではない。毎度の、いかにもアニメ的なドジっ娘描写にも魅力はないし、言動なりエピソードなりで何か特別なものを見せないで、どう感情移入すればいいのか。

 これはまあ難しいことではある。劇中の何かの魅力は、その魅力を受け止める登場人物の反応を見せることで、それがあると見なすことを読者・観客に納得させるというお約束もある。だからポンポさんなり主人公なりがヒロインの魅力に反応しているからには、それは「ある」ということにしておくべきなのかもしれない。

 だがそれはそれである種の理屈を立ててもほしい。最近観ている「ブルーロック」は、いちいち理屈を立てるところが魅力だ。サッカーの強さは、現実には速さや力強さや判断の的確さの積み重ねで差がつくだけだとも言えるのだろうが、それだけでない、何かがそこに起こっているのだ、といえる「何か」を考えてほしい。そういうのがなしに、ただ主人公が強くても、だからなんだという気もしてしまうのだ。以前「星合いの空」の試合の演出に呆れたのはそういうことだった。

 そして、劇中でニャカデミー賞を獲ることになる作品の描き方にも疑問がある。そんなにうまくいくかという、ご都合主義を感じて冷めてしまう展開はまあ放っておいてもいいが、問題は「作品は大衆のためにではなく、誰か一人の人のために作れば良いのだ」というテーゼが語られ、それがために成功したのだという理屈になっているはずなのに、問題の「ポンポさんのため」という理屈がどのように成立しているのかわからない。単に長い映画が好きではないと言ったポンポさんに合わせて90分にしたというだけなのだ。それはポンポさんの要望にあわせたということではあるが、それでどうその映画が良いものになったのかはわからない。

 とにかく物作りへの情熱が描かれるお話は好意的に受け取られやすい。それが映画となれば、映画関係者は感情移入したくなるだろう。

 だがどうにも理屈が立っていない。

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