実際の出来事を描く映画の主演の三人が、実際のその出来事の本人たちだというのだから、なんとも驚くべき作り方だ。それも、一場面にちょい役で出て来るというのではなく、全編出ずっぱりで、かつ問題の出来事の場面は映画のほんの一部分で、それ以外のほとんどは、その出来事に至る日常を描いているのだ。三人は、まったく真っ当に役者をやっているのだった。どうやったらこんな撮り方ができるのか、想像もできない。
そもそもクリント・イーストウッドは、すべてのテイクをリハーサルなしの1テイクで撮るというのだが、できあがっている映画はすこぶる完成度が高く見える。お芝居をさせてそれをワンカットでベタ撮りするだけという素人映画っぽい感触は微塵もない。いくつもの角度から撮られた映像を的確に編集して、まるで違和感なく見せる。これがワンテイクでできているとか、素人が主演であるとか、どうなっているのか。
物語としては、電車内で起こるテロ事件を描くのが主眼ではなく、その瞬間に向けて彼らの人生がどう積み重ねられていくかを描き、映画の最後にようやく迎えるその瞬間に、体を投げ出すことのできる主人公に素直に喝采を送りたくなるように作られている。
長さにちょうどいい佳作。
0 件のコメント:
コメントを投稿