昨年放送のNHK「世界サブカルチャー史」は驚くほど面白いドキュメンタリー・シリーズだった。アメリカを中心とする文化史と社会世相史が、60年代から10年刻みで描かれる。基本は各年代の社会状況を概観し、そうした社会問題のいくつかの断面を象徴する映画を数本ずつとりあげるのだが、その中で90年代の人々の世界観を象徴する映画として本作が取り上げられていた。あわせてNHKがBSで放送している枠で、「サブカルチャー史」で取り上げている映画を何本も放送しているのもありがたい。
この世は作られた虚構の世界で、自分の観ていない世界の裏側でそれをコントロールしている者たちがいるというモチーフは数々の物語に見られる、現代人共通の感覚なのだろう。そこから現実への回帰を描くというのが基本的な物語の帰趨なのだが、それだけ言うと『竜とそばかすの姫』と同じテーマを描いていることになってしまう。だが観終わったときの感情ははるかに複雑で、これがどういうものかというのはなかなか分析が難しい。我々が広告に象徴される資本の論理の中に生きていることやら、テレビという虚構を見ている我々と我々の生とか、映画を作っているスタッフと映画内とか、いくつかの層が入れ子状になっていて、その境界をまたぐような感覚があるようなのだが、これをちゃんと考えるには時間が必要だ。
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