未見のクリストファー・ノーラン作品ではあったが、最近『チャーチル』を観て、それにまつわる『映像の世紀 バタフライエフェクト』なども見返し、入りやすくなったところで本作を。
さすがノーラン。冒頭のフランスの住宅街を主人公たち兵士が歩いて行く後ろ姿と舞い散るビラをスローで捉えるカットから、映画的な質の高さが満ち満ちている。物語はサスペンスに満ちていて、必要な劇的要素は揃っている。
「ダンケルクの大撤退」については、ある意味での成功という結末は決まっているのだから、そこへ向かって着地させればハッピーエンドは約束されている。カタルシスはある。
だが、文句なく凄い作品だったというような感動があるわけではなかった。これは映画制作者たちのせいではない。映画は間然するところがない。とにかく金のかかった、エキストラを大量に動員した画面も、船が倒れるスペクタクルをたっぷりと描く撮影も、燃料切れでプロペラが停まってから着陸するまで、ゆっくりと滑空する戦闘機の切なさと安堵感と、戦場から戻って故郷へ向かう列車の中で不意に車窓に映る田園風景も。映画的には文句なく凄い。
が、それでも観るものとの出会いの魔法が起こるかどうかは偶然に左右されるのだ。
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