あまりに予備知識なしで見始めたんで、途中で役者を知っているのか確かめたくなってアマゾンのサイトを見ているうちに、ネタばれ情報を見てしまった。『鳩の撃退法』を見て間もないのだが、これもまた、現実と虚構の境目が意図的に混乱するように描かれているのだった。で、どれが「現実」なのかを知ってしまったわけだが、いやそちらが虚構でもかまわないはずだ。全部の情報を精査したわけではないが、虚構パートも、まるで「現実」的な手触りで描かれている。じっくり考えていけば、これは妄想=虚構と考える方が理に適っているかという納得も、一応はできそうな気もするが。描き方のリアリティは、ほとんど同等の水準に思える。そのうち、これは地続きの「現実」だと考えるのは難しいから、といってパラレルワールドを描こうとするSF的な手触りを醸し出しているわけでもないから、つまりは一方が「現実」、一方は妄想により作り出された「虚構」なのだろうと解釈されてくる。どちらをどちらと考えるのが筋道が立っていそうか見当をつけながら追っていくと、「虚構」側だと思っていたシークエンスが、ふいに「現実」側に着地したりする。
仕掛けは面白いし、描き方は文句なくうまいのだが、それでどこに気持ちをもっていけばいいのか。悲劇に身を切られるような共感を抱く? 素直な感情として感動したかと言えば難しい。
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