TBSの「日曜劇場」は今「おやじの背中」というシリーズを放送中だ。
これがまことにおどろくべき企画で、「日本を代表する」脚本家10人がオリジナルの1時間完結の脚本を書き下ろす、というのだが、このメンバーを見て、シルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの共演だという「エクスペンダブルズ」のCMを見たときの衝撃を思い出してしまったのだった。ジェイソン・ステイサムだのブルース・ウィリスだのといった売れっ子を並べるところもすごいが、なんといってもスタローンとシュワといったオールド肉体派が同じ映画に出て、しかもちゃんとアクション映画だというところがすごい(観てないけど)。
かたや「おやじの背中」もすごい。ステイサムだのウィリスだのにあたる岡田惠和や井上由美子、橋部敦子、三谷幸喜という売れっ子を揃えるのもすごいが、ここになんと鎌田敏夫(77歳)・倉本聰(80歳)・山田太一(80歳)という、ものすごい超ベテランを並べているのだ。肉体派のアクション俳優と違って「現役」脚本家であることは可能ではあるんだが、もはや「売れっ子」とは言い難いこれらの重鎮を、これでもかと並べる企画がよく実現したものだ。さらにドルフ・ラングレンにチャック・ノリスにジャン=クロード・ヴァン・ダムといった格闘家出身の映画スターを、これでもかと並べる「やり過ぎ」感もすごいし、こっそりランディ・クートゥアやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラなんていう、つい最近まで現役だった本物の格闘家を登場させてしまう悪趣味(いや、観てないのでちゃんとリスペクトされてるのもかもしれないが)も、悪のりが過ぎるだろ、とつっこみたくなる(なおかつ「エクスペンダブルズ3」にはメル・ギブソンとハリソン・フォードの出演も予定されているというから、もはやなにをかいわんや)。これに対抗して(別に対抗する必然性はないが)、悪のりついでに宮藤官九郎を引っ張り出せれば完璧だったのに。ここに木皿泉や池端俊策といった実に渋い面子がラインナップされているところはミッキー・ロークとジェット・リーにあたるのかもしれないが、個人的には今は亡き田向正健が倉本聰・山田太一とラインナップされているのを見たかった。
さて、未見の「エクスペンダブルズ」はともかく、「おやじの背中」は、毎週録画しているのだが、楽しみで次々見てしまうというわけでもなく、この「気になる」感に決着を付けるためになんとか消化しているという感じ。
スタローンやシュワルツェネッガーのアクションに切れがあるという期待はできないが、さすがに鎌田・倉本・山田も、30年前に心を奪われる思いで追っていた彼らのドラマ群のような切実さは、もうないのだった。ならばしみじみとした滋味のようなものが醸し出されてきているかというとそういうわけでもなく、やはり(決して良い意味ではなく)枯れているのだった。それともむしろ三人とも、連続ドラマで見たい脚本家なのかもしれない。1時間完結のような、TVドラマとしては謂わば「短編」のような作品では、三人の、連続ドラマならではの贅沢な時間の使い方でこそ描ける人間の描写が難しいのだろうか。
現在までの7話では、2話の坂元裕二「ウェディング・マッチ」が出色だった。恐るべき面白さだった。脚本と鶴橋康夫の演出と役所広司と満島ひかりの演技が見事に咬み合って、嘘だろ、と思うほどのテンションの高い会話劇の面白さが展開していた(絶叫系の「テンションの高い」演技を熱演と称するのと違って、感情の行方を見届けずにはおけない、観客の注意を振り回すテンションの高さ)。最高の賛辞を送りつつ、最後の「マッチ」が戯画的になってしまったのと、あの結末は惜しむべき瑕疵だと思う。これは父の期待に応えることが自己目的化してしまっている娘が、そこからの独立を図って葛藤するって話だと思う。とすると、やっぱり痣だらけの顔でバージンロードに並ぶ二人を描かなきゃだめだと思ったんだけど。
娘と一回見て、後で息子にもさわりだけ見せようとしてそのまま終わりまで見てしまった。見終わった息子がしばらく後で「なんか切なくなってしまった」と呟いていたのは意味深だった。挫折したギターのことか、中途半端だった柔道のことか、実現しなかった共作脚本の上演のことか、と内心あれこれ推し量って口にはしなかったが(まあそのうちこれを読むかもしれないが)。
追記
「そのうち読」んだ息子に言わせると「そんな意味深な話じゃないよ」だそうな。久しぶりに面白いTVドラマを見て、そういう面白い番組をいくつか見ていた中学生の頃を思い出したんだそうな。今や実生活を大いに面白がっている高校生活が2年以上続いて、そういう感覚が懐かしく思われたんだと。ふーん、そうなのね。
これがまことにおどろくべき企画で、「日本を代表する」脚本家10人がオリジナルの1時間完結の脚本を書き下ろす、というのだが、このメンバーを見て、シルヴェスター・スタローンとアーノルド・シュワルツェネッガーの共演だという「エクスペンダブルズ」のCMを見たときの衝撃を思い出してしまったのだった。ジェイソン・ステイサムだのブルース・ウィリスだのといった売れっ子を並べるところもすごいが、なんといってもスタローンとシュワといったオールド肉体派が同じ映画に出て、しかもちゃんとアクション映画だというところがすごい(観てないけど)。
かたや「おやじの背中」もすごい。ステイサムだのウィリスだのにあたる岡田惠和や井上由美子、橋部敦子、三谷幸喜という売れっ子を揃えるのもすごいが、ここになんと鎌田敏夫(77歳)・倉本聰(80歳)・山田太一(80歳)という、ものすごい超ベテランを並べているのだ。肉体派のアクション俳優と違って「現役」脚本家であることは可能ではあるんだが、もはや「売れっ子」とは言い難いこれらの重鎮を、これでもかと並べる企画がよく実現したものだ。さらにドルフ・ラングレンにチャック・ノリスにジャン=クロード・ヴァン・ダムといった格闘家出身の映画スターを、これでもかと並べる「やり過ぎ」感もすごいし、こっそりランディ・クートゥアやアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラなんていう、つい最近まで現役だった本物の格闘家を登場させてしまう悪趣味(いや、観てないのでちゃんとリスペクトされてるのもかもしれないが)も、悪のりが過ぎるだろ、とつっこみたくなる(なおかつ「エクスペンダブルズ3」にはメル・ギブソンとハリソン・フォードの出演も予定されているというから、もはやなにをかいわんや)。これに対抗して(別に対抗する必然性はないが)、悪のりついでに宮藤官九郎を引っ張り出せれば完璧だったのに。ここに木皿泉や池端俊策といった実に渋い面子がラインナップされているところはミッキー・ロークとジェット・リーにあたるのかもしれないが、個人的には今は亡き田向正健が倉本聰・山田太一とラインナップされているのを見たかった。
さて、未見の「エクスペンダブルズ」はともかく、「おやじの背中」は、毎週録画しているのだが、楽しみで次々見てしまうというわけでもなく、この「気になる」感に決着を付けるためになんとか消化しているという感じ。
スタローンやシュワルツェネッガーのアクションに切れがあるという期待はできないが、さすがに鎌田・倉本・山田も、30年前に心を奪われる思いで追っていた彼らのドラマ群のような切実さは、もうないのだった。ならばしみじみとした滋味のようなものが醸し出されてきているかというとそういうわけでもなく、やはり(決して良い意味ではなく)枯れているのだった。それともむしろ三人とも、連続ドラマで見たい脚本家なのかもしれない。1時間完結のような、TVドラマとしては謂わば「短編」のような作品では、三人の、連続ドラマならではの贅沢な時間の使い方でこそ描ける人間の描写が難しいのだろうか。
現在までの7話では、2話の坂元裕二「ウェディング・マッチ」が出色だった。恐るべき面白さだった。脚本と鶴橋康夫の演出と役所広司と満島ひかりの演技が見事に咬み合って、嘘だろ、と思うほどのテンションの高い会話劇の面白さが展開していた(絶叫系の「テンションの高い」演技を熱演と称するのと違って、感情の行方を見届けずにはおけない、観客の注意を振り回すテンションの高さ)。最高の賛辞を送りつつ、最後の「マッチ」が戯画的になってしまったのと、あの結末は惜しむべき瑕疵だと思う。これは父の期待に応えることが自己目的化してしまっている娘が、そこからの独立を図って葛藤するって話だと思う。とすると、やっぱり痣だらけの顔でバージンロードに並ぶ二人を描かなきゃだめだと思ったんだけど。
娘と一回見て、後で息子にもさわりだけ見せようとしてそのまま終わりまで見てしまった。見終わった息子がしばらく後で「なんか切なくなってしまった」と呟いていたのは意味深だった。挫折したギターのことか、中途半端だった柔道のことか、実現しなかった共作脚本の上演のことか、と内心あれこれ推し量って口にはしなかったが(まあそのうちこれを読むかもしれないが)。
追記
「そのうち読」んだ息子に言わせると「そんな意味深な話じゃないよ」だそうな。久しぶりに面白いTVドラマを見て、そういう面白い番組をいくつか見ていた中学生の頃を思い出したんだそうな。今や実生活を大いに面白がっている高校生活が2年以上続いて、そういう感覚が懐かしく思われたんだと。ふーん、そうなのね。
0 件のコメント:
コメントを投稿