2018年7月8日日曜日

『海街Dialy』 『海よりもまだ深く』-盤石の是枝作品

 『三度目の殺人』も『万引家族』も見ていないが、その前の二作を観ていなかった是枝裕和映画を二本まとめて。珍しく、一日で二本観てしまった。

 『海街Dialy』は主演の4姉妹に、それぞれ主役級のきれいどころを揃えたメジャー感が前面に出て、なんとも画面が華やかなのだが、これが驚くほどストーリーの起伏に乏しい、「淡々と」系の物語なのだった。
 もちろんうまい。個々のキャラクターにまつわるドラマがそれぞれ堅実に描かれていて、4姉妹がさまざまな映画賞でそれぞれ受賞するという恐るべき結果を残したのもうなずける。
 そのうえで、何かすごい感動を味わったというようなこともなく、あっさりと終わった印象でもあった。広瀬すずが自転車で駆け抜ける並木道の木漏れ日はやはり美しかったが。

 一方『海よりもまだ深く』は、観始めてすぐ、主人公が阿部寛でその母親に樹木希林とくれば『歩いても 歩いても』じゃないかと気づく。主人公は例によって「りょうた」である。
 『そして父になる』は主人公が「りょうた」であるという点で「この系列」に属しているのだろうか。やはり「りょうた」といえば『ゴーイング・マイホーム』以来の阿部寛である。ちょっと情けないところが「りょうた」なのである。福山雅治はやはりどうにもイメージがずれる。
 さて本作だが、「この系列」としては、結局『歩いても』ほどの強さはなかったが、もちろんうまい。隅々までうまい。ちゃんと「人間」を描いている、と感ずる。
 そして、『海街Dialy』に比べて、台風の訪れによる家族の(一時的な)再生というドラマが、一応の山場として感じられるようには、プロットができている。『歩いても』のような再生ではなく、結局情けないままの主人公の苦さは、それもそれ、現実の手触りとしてはアリだろう。
 
 いずれも、期待が是枝作品という前提で設定されているから、まあ裏切らなかったものの、優に超えるというものでもない。

 ふと気づくと、『海よりもまだ深く』で、蒔田彩珠が小林聡美の娘役で出ている! この関係は『anone』じゃないか!
 蒔田彩珠は『ゴーイング・マイホーム』の阿部寛の娘役で、えらく演技の上手い子役がいるもんだと感心したことがあり、あれがそもそもの是枝作品初体験だったのだった。
 それにしても、今日の映画に比べても『ゴーイング・マイホーム』や『anone』の方がはるかに強い印象を与えてくれるのは、テレビドラマという長尺の枠が、観る者に物語を「生きさせる」からだろう。

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