2019年4月19日金曜日

『夜は短し歩けよ乙女』-安心の湯浅クオリティ

 『四畳半神話体系』のつもりで見始めると、主人公の浅沼晋太郎が星野源なぞになっているのは許しがたいという感じがするが、ヒロインの坂本真綾が花澤香菜になっているのは許せる。まあ違う物語なんだから、声優まで同じにしては混同してしまうということもあるが、確かにあちらの「明石さん」とこちらの「黒髪の乙女」は違う人物で、なんといってもこのヒロインのキャラクターがこの映画の大きな魅力なのだった。
 もちろん坂本真綾がやればまた違う魅力があったのだろうが、花澤香菜の声は、あの真っ直ぐで天真爛漫でそのくせエネルギッシュなヒロインを見事に生きたものにしていたのだった。
 もちろん湯浅政明の奔放なイマジネーションには圧倒されるし、森見登美彦の軽妙な調子も心地良い。
 そして、物語の最後まできて、これが一夜の物語だと言われた時の時間感覚の揺らぎが起こす眩暈がなんとも素晴らしい。約90分と、決して長い映画ではないのだが、めまぐるしいイメージの奔流に、長い時間が経ったような錯覚に陥るのだ。
 これがまた、調べてみると原作では1年間の物語が一夜の出来事として再構成されているのだそうだ。上田誠か湯浅政明か、良い仕事をした。

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