2019年4月17日水曜日

『お米とおっぱい』-低予算だから腹も立たない

 『カメラを止めるな』の上田慎一郎監督の初期の長編。この世からお米とおっぱいのどちらかがなくなるとして、残すならどっちか、というテーマで議論をする4人と、見届け人として部屋の外に待つ老人の男の、キャストは5人のみの密室劇。
 事前に情報として知っていたとおり、『12人の優しい日本人』オマージュ、というかパロディである。ほとんどそのままの役割分担に演技プラン。そこに新しい何物も足してはいない、と感じた。
 ばかばかしいことに開き直っている、というのは別に褒め言葉ではない。議論が知的に展開されるわけでもないし、議論から、それぞれの人物の背景が明らかになっていくにつれて引き込まれていくようなドラマがあるわけでもなく、パロディとしてのメタドラマに感心するでもなく、つまり特に何に感銘することもなく。
 でもここまで自主映画として低予算だと、特に腹も立たない。これは重要なことだ。面白くない映画に腹が立つのは、それが金と時間と多くの人の手間のかかった結果だからだ。
 低予算でも良い映画はできるのだろうし、『カメラを止めるな』も低予算をうたってはいるが、いやいや、あちらはちゃんと撮られている。それに比べてこちらのちゃちいことは覆うべくもない。そして結局のところこれは、上田監督の才気は感ずることができるが、残念ながらエンターテイメントとしては金の取れるものとは言いがたい代物だった。
 だがこういうのは作り上げることが重要なのだ。これがあってこそ『カメラを止めるな』があるのだろうから。

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