2020年4月4日土曜日

『トラフィック』-手堅く立体的に描かれる

 スティーブン・ソダバーグは劇場で観た『コンテイジョン』の印象が一番強い。今回のコロナウィルス騒動に既視感があるようにさえ思える。
 こちらはアメリカとメキシコをまたぐ、麻薬撲滅に奔走する政治家や警察官などの活動を描く群像劇で、タッチは『コンテイジョン』とよく似ている。したがって、よく出来ている。面白い。
 「ドキュメンタリー・タッチ」などと言われる、事態の推移を的確に追いつつも、そこに生ずる悲喜こもごもを描く。一つ一つのエピソードで過剰に情緒的にはならないが、さまざまなドラマが、しかしテンポ良く手堅く立体的に描かれる。
 麻薬組織を追うメキシコとアメリカの刑事の二組のコンビは、どちらもその片方が命を落とす。アメリカの麻薬撲滅対策の総責任者の娘がよりによって麻薬中毒で、親への反発はいささかステレオタイプにも思えるが、行方の知れなくなった娘を探し歩いて、とうとう見つけた娘が、ラリったまま、近寄った父親に微笑みかける場面はやはり感動的だった。

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