2015年1月31日土曜日

『ツーリスト』

 「アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップ2大スター共演の極上のサスペンス」とかいう情報しかない状態で観る。空撮のベネツィアの街並みが綺麗で、何やら秘密捜査をしているらしい国際警察の捜査の様子を描写する演出もそつがない。うまいなあ、こういうのって、ほんと邦画では見られないテイストだよなあ、とは思うが、映画が進むにつれ、どうも気持が盛り上がらないことは否めないぞと内心思いつつ、それを認めたくないとも思いつつ、「大ドンデン返し」という結末を予想していると、結局その通りになる。
 これ、面白い映画なの? と不審に思ってネットの評を観ると、なんだ、みんなそう思ってんだ。
 とりわけ宇多丸の「週刊映画時評『ザ・シネマハスラー』」での酷評は、ぼーっと観て「なんか面白くない」とか言ってる腑抜けた私の感想とは大違いの緻密な批評だった。その脚本の構成の根本的な不整合を的確について、実に納得の批判だった。
 こういうの、先に評価を調べてから観た方がハズレを避けられるよなあ、とは思うが、他人の評価と自分の好みが食い違うことも多いし、思いがけない出会いもあったりして、とりあえず観てみるか、となる。この映画も、映画としてはちゃんとハリウッド大作のレベルを満たしていると思う。ただ、脚本がだめなことをどうしても誰も何とかしようとしないのだろう。宇多丸も「どうしてこの映画、作られちゃったんだろう」というような言い方をしていたが。こういうのって、どうして誰も太平洋戦争を止められなかったんだろう、みたいな「コンコルドの誤り」なんだろうか。

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