2015年4月30日木曜日

『ボクたちの交換日記』(監督:内村光良)

 よせばいいのに観てしまった。
 センチメンタルで悪くないお話だとも思う。むしろ素人監督としては、意外に真っ当に作ってるなあ、と感心していた。
 「小品」ならばこういう味わいも許す。だが2時間近い映画では手放しで高評価はできない。単なる「センチメンタルで良い話」では。
 とりわけ、最後近くの伊藤淳史の演技は、あれだけうまい役者を使っておきながら、やはり演出の方向が間違っていると思う。最近のドラマで満島ひかりや瑛太の演技をすごいと思うときの「強い感情の放出」は、何も取り乱して絶叫するとか怒鳴るとかいう大げさな演技によって観客に感じ取れるわけではない。丁寧なリアリティの積み重ねと抑えた演技によってバネが圧縮されるようにして放出されているはずだ。
 終盤で、ゴミの中から題名の「日記」を探す場面、手当たり次第に半透明のゴミ袋を破いて、目指す日記をみつけるとその場で読み出し、あろうことかその場で返事さえ書く。だがその場には、ゴミの収集係が複数名、脇で立ち尽くしているのである。
 現実にはあまりにも不自然と感じられる行動をとらせてしまうと、そこに強い感情を乗せても、観客には共感できない。むしろ散らかったゴミを片付ける係の人の怒りを想像して、そちらに共感してしまう。映画の物語の動向とまるで関係なく。
 そんなふうに観客の気を散らすのは、どうみてもマイナスだと思うのだが。
 徒らに「ドラマチック」を狙って余計なことをするな! という感じである。

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