2019年5月5日日曜日

『君よ憤怒の河を渉れ』-またしても謎のトンデモ映画

 原作の西村寿行は中高生の頃に好んで読んだ小説家のひとりだという思い入れがあったり、高倉健の映画はなるべく観ておきたいとも思ったりして録画したのだが、いやはや。やれやれ。
 見終わってから調べてみると、中国で8億人(!!)が見たとかいう、数字は信じ難いがまあそれなりにヒットしたのだろうという映画なのだった。数が信じ難い以上に、このトンデモ映画が、どういうわけか結局作られてしまうのが毎度の映画産業の不思議なのだった。
 どうにかして面白くしようとしてうまくいかない、というそれなりに事情のわかる(『稀人』のような)パターンと違って、こんな馬鹿げた誰かの思いつきをなぜ誰も止められなかったのかがわからないという不思議。
 ツッコミどころが満載なのはネット上でさんざん言われ尽くしているので繰り返すのも空しい。
 にもかかわらず、健さんや原田芳雄や中野良子が素晴らしい演技を見せているのは驚くべきことだ。演出がひどいと、良い役者でも良い演技ができないという例は枚挙に暇ないのだが。
 物語を支配している論理が人間を浅くしか捉えていないと、描かれる人間も浅くなってしまう。
 だというのに中心となる3人は、物語上の人物造形がいかに浅くても、そこにそういう人物がいるのだと思わせる自然な演技や、思いがけない微妙な感情の発露をを手堅く実現したりする。
 それだけでも観る価値はあったとまでは言わない。やはりどうにもくだらない。よもや原作(未読)はこんなことにはなっていまいな。

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