2020年2月11日火曜日

『十三人の刺客』-名作の名に恥じない

 2010年の三池崇史版が楽しかったので、この機会に元の工藤栄一監督版を。
 白黒の画面の陰影が美しい。霧の中から姿を現す人馬の群れ。やや俯瞰に捉えた田んぼの中を逃げる男。
 それぞれの武士としての覚悟やたたずまいも味わい深いし、終盤の集団殺陣が手の込んだ創作物として感銘に値するのも確かだし、名作の名に恥じない。
 主演の片岡千恵蔵は、その泰然としたたたずまいだけで充分観られる存在感である。不思議なことに、歌舞伎役者である片岡の台詞回しが、時代劇のものものしい台詞の多い演技の中で、最も自然な口調なのだ。鷹揚な大人物、という存在感は、さすがこれが往年の大スターってやつか、という感じだ。

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