2021年3月13日土曜日

『ラスト・ムービー・スター』-甘さを許せるなら

  バート・レイノルズの遺作で、すっかり落ちぶれた往年の人気俳優が、安っぽい映画祭にゲストで招かれて扱いの酷さにキレて帰ろうとするが…。

 これは『その男 ヴァン・ダム』だ。『バードマン』もそうなのか? 『運び屋』も気分的にはそれに近い。

 それらの映画と同じく、やはりどうしても独立した物語としてではなく、若い頃の映画作品やら俳優としての社会的イメージやらを借景とする鑑賞を観客に強いる。それ込みでやはりなんとも切なくて温かくて後味のいい映画だった。もちろんドラマとしては相当に甘いんじゃないかという突っ込みはいくらでもできるとして。

 甘いとはいえ、映画としては決して安っぽくはない。映画祭の安っぽさに腹を立てるところも、しかしファンが心から歓迎しているところを描くことで、バランスをとる。これが、ひたすら主人公を酷い目に遭わせて「面白いでしょ?」と言っているような描き方をされたらがっかりだ。

 故郷を訪ねるくだりで、やはり往年のスターとして敬意を払われるエピソードに救われる思いがするのは、落ちぶれた現状に観ているこちらが大いに同情的になっているせいだ。

 認知症になったかつての妻を訪ねるエピソードやら、すっかり反省して映画祭に戻って、人生を見つめ直すなどというあまりの甘さを許せるならば、大いに幸せな映画ではある。

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