2021年3月18日木曜日

『ペルソナ3 劇場版』-ゲームの限界

  劇場版4作のうち、第3作の『秋』編を除く3編を、続けて。

 基本設定である「影時間」の異世界観は悪くないが、「シャドウ」や「ペルソナ」のデザインがゲーム的な荒唐無稽さでちょっとついていけない。デザイナーの金子一馬は上遠野浩平の「事件」シリーズのイラストレーションで応援したい気持ちはあるのだが、あの金属的で独特の質感のイラストをアニメにした際の情報量の脱落が何だか無残な軽さになってしまっている。


 3作目で展開が大きく変わったようでもあり、十分にストーリーを把握しているわけではないとはいえ、全体として、特別面白かったとも思えなかった。

 とはいえアニメーションとしては4作目はずいぶんとレベルが上がっていて感心したし、1作目からの異世界観が現実ににじみ出したような陰鬱な雪の降る冬の終末感は悪くなかった。

 だが問題はやはりゲーム的なバトルの必要であり、結局は「仲間との絆と根性でがんばる」という原理でしかドラマツルギーを支え切れていないことが決定的な弱さになっている。これもまた「スーパーマン映画の不可能性」の一種で、何が限界条件なのかがちっともわからないのだ。戦いが物理的なものかどうかさえ。

 それは原作がゲームであり、ゲームとしての様式を満たす必要のあるところからくる限界か。


 とはいえ6時間にも及ぶ物語につきあってしまうと、なんだかあの仲間たちに妙な愛着を感じてしまうのも確かだ。いろいろあって大変だったが、ハッビーエンドで良かったなあ、と。

 こういうのは長い物語を観た効用。

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