2021年3月23日火曜日

『ハウンター』-物語の論理の混乱

  アビゲイル・ブレスリンが出てくるから、これは安っぽい映画ではないんだろうと思って観ていると、たちまちそんなことはないのだとわかる。例によって「リピート物」としてリコメンドに挙がってきたのだが、先日の『リピーテッド』よろしく、俳優の出演料に映画のレベルがともなっていない。場面の端々、画面の隅々がいかにも誤魔化している感じの曖昧さに満ちている。演出がそうなってしまうのはそもそも脚本がそうだからだ。

 リピートする場面が提示され、主人公だけはそれを自覚しているという設定が知らされる。となれば、リピートの起こる仕組みを本人は知ろうとしなければならない。例えば徹夜をしてでも、時計やカレンダーがリセットされる瞬間が見られるのか。

 だがそんなことはしない。何となく同じ時間を繰り返しながらそれに流されるばかり。その必然性はもちろんある。主人公が明晰ではいられない理由は。

 だがそれならば物語の論理は厳密ではいられない。

 実際にそうなのだ。主人公は既に幽霊だというのだが、敵につかまるとガムテープで縛られている。それを逃れるためにライターを後ろ手で点けてガムテープを切る。なんなんだ。この展開は。霊体の行動の原理はいったいどういうことになっているのだ。

 同じく霊体になっている殺人鬼をやっつけて、結末ではリピートを抜けて明るい未来が待っているという。幽霊なのに。「明るい未来」とやらもただ光で満ちて何も見えない空間だけ。

 こういう脚本で良い映画ができるはずがない。

 これがあの『CUBE』の監督なのか。テレビシリーズの『ハンニバル』のいくつかも監督しているのだが、作品のレベルが一定しないのは何とも不思議。

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