2022年2月5日土曜日

『THE GUILTYギルティ』-すさまじい緊迫感と焦燥感

 ちょっとだけ冒頭を観ようと思って開いたら緊迫感がすさまじく、既に遅い時刻ではあったがそのまま終わりまで観てしまうことにする。

 警察の緊急通報室で完結するある意味SSS。しかし事件はそこで起こっているのではなく、電話の向こうで起こっている。しかしドラマは確実にこの部屋で起こっている。

 電話で伝えられる情報でのみ、事件の輪郭を描いていくしかないという意味で、観客の認識は主人公と完全に同化している(映画中の時間経過もほとんど上映時間と一致している)。少しずつ事件の概要がわかってくる。電話でできる限りの指示や情報収集をしていくが、現場に駆けつけられないことも、情報を求めるのに受動的になることも、灼けるような焦燥感を生じさせる。

 動きのないままカットが変わらないという意味では『箪笥』『A Ghost Story』にも劣らずカットが長い。どうした、と思うほど何も動かないままカメラが切り替わらない。その間カメラは主人公の顔のアップのままだ。

 それなのに、『箪笥』『A Ghost Story』に感じたようなもどかしさ、苛立ちはない。緊迫感・焦燥感が持続しているからだ。

 かように演出と演技が極めて高いレベルにあるのはもちろんだが、そこにはやはり脚本の出来が不可欠。情報の制限が主人公と観客のミスリードを誘っておいて、徐々に真相がわかってくる巧みさも、事件の展開とともに少しずつ明らかになる主人公自身のドラマがからみあっていくのも、感嘆するほど上手い。

 これほどの低予算で、これほど面白くなるのは映画制作にとって大いなる希望にちがいない。

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