原題は主人公の名前『ミス・スローン』なので、この邦題は全くの創作だが、もちろんアダム・スミスのもじりだろうから、何かが意外な形で自然に、不作為に調和するという結末になるんだろうと思っていたら、単に女性主人公の隠していた奥の手、くらいの意味だった。劇中で「手を隠している」という表現が何度か使われていたところからの発想だろうが、つまらぬミス・リードを招くから原題のままでいいのに、と思ったり。
すごい映画だった。アメリカ政治におけるロビー活動の様子も興味深いが、とにかく作戦遂行にあたっての実行力と議論力が素晴らしい。ついていくのは大変だがスリリングでエキサイティングこのうえない。
知的に組み立てられたゲームが劇中に展開しつつ、そこにプライドや生活やもはや人生がかかっているといっていい重みがある。敵が無能にも、単なる悪にも描かれない。そういう価値観も理もあるだろうと充分に思える。
単なる痛快な結末というわけではなく、何かを得るために何を犠牲にするかという決断と、それに向けた綿密な計画と、それを物語としてのクライマックスに見せる映画としての構成に唸った。
これほどの演技を見せたジェシカ・チャスティンがアカデミー賞にノミネートされないのは、銃規制というテーマに対する配慮から、映画自体がタブー視されたんだろうか。
ともかくも脚本・演出・編集・演技ともに最高級の一作だった。
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