2023年8月10日木曜日

『T2 トレインスポッティング』-前作という「青春」

 あの破滅的な物語に対して、20年経って、完全な続編を作ろうと、どうして思いたったものか。だが「青春」には決着をつけるべきなのかもしれない。どうなるのか気になるというのは、『1』の中だけではないともいえる。彼らのその後の人生がどうなるかはやはり気になるのが当然かも知れない。

 さて映像表現はますますグレードが上がって、観ていること自体に映画的な快楽がある。意外性の高い画角と挿入映像、編集のテンポ。見事だ。

 で、物語の方はと言えば、それなりに救いもあるが、相変わらずの退廃的な生活ぶりの変わらなさは、もしかしたら、思いのほか「青春」なんてものの特別さはないという結論なのかも知れない。そういえばちょうど今観ている「最高の教師」というドラマの中で、高校生が教師に「青春って何?」と問いかけるシーンがあって、脚本では高校生の頃について「後から振り返ってあれが『青春』かもしれないと思う」と語っているが、そのことの特別さが明らかになっていたわけではなかった。ドラマを見ながら自分も考えてしまって、そんなものの特別さはないな、と思ったのだった。

 そう、人間はそう変わらない。相変わらず退廃的な生活を送る者はいる。そういえば『1』でも、中年のヘロイン中毒者もいた。犯罪者に若い者が多いという傾向もあるまい。

 にもかかわらず、映画は、『1』をしばしば参照し、あきらかに現在から観たノスタルジーについて語ってもいる。そしてそれは成功している。登場人物が『青春』時代を物語として書き起こし、どうやら最後にその原稿が出版されるような展開になることが示される。なんだか懐かしいと感ずるはずの観客の反応が充分に予想されている。

 もしかしたらあれは、監督や俳優陣にとって『1』を作ったときのことがまさしく「青春」だったということかもしれない。


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