2017年12月20日水曜日

「サクラダリセット」ふたたび

 アニメ放送の終了時に一度ふれたことがあったが、その後、原作の小説を読みすすめて終盤にさしかかったところで、図書委員から「おすすめ図書」を挙げろという依頼が入ったのを機に、最後までいっきに読み終えた。最終7巻は一日で。巻の後半に入って、これはこのままいこうと決めた。布団の中で深夜までかかって読み終えるという読書は幸福だ。すごい物語だった。
 というわけで以下、前回の記事を使い回しつつ「おすすめ図書」。

 2009年に刊行の始まったこのシリーズを知ったのは、遅ればせながら今年のアニメ化によってだった。初回から、「時間を巻き戻せる」という設定のせいでなんだか筋を追うのが大変だぞというのと、台詞回しが妙に面白いなというのが印象的だった。ただ、その後2クールの放送を追ってみて、花澤香菜と悠木碧の演技の素晴らしさが特筆に値するという以外はアニメーションとしては凡庸な量産深夜アニメレベルを脱しなかった。それでも最後まで見続ける気になったのは、物語のあまりの力量に圧倒されたからだ。
 これは原作の面白さに決まっている、と図書室に購入を希望して揃えてもらった。そういうわけで全巻の貸し出し第一号は私だ。読んでみると、複雑なストーリーラインも、ウィットに富んだ台詞も、やはりこの物語の素晴らしさは原作に拠るのだった。
 ある種のタイムリープを設定としてもちこむと、物語の論理はすぐに複雑になる。設定上、パラドクスこそ回避されているが、可変的な未来を知る者同士が、どの時点で何を知っていて、何を意図しているかを個々の状況に応じて把握しなければならない。その上で十分に頭の良い複数の登場人物が、互いに相手の思惑を上回ろうと策略をめぐらす。それは相手も十分読んでいるだろうから、その上を行こうとすれば…と、まるで将棋や囲碁の対戦のような複雑な論理の絡み合いになる。ある条件下でこの難問を解決するにはどんな方法をどんな手順で実行すれば可能なのか…。どこまでも複雑な構築物としての物語に目の眩む思いがした。
  そして、この物語では何より「言葉」が大切にされている。超能力者たちが跋扈する世界での戦いであるにもかかわらず、この物語の主人公とラスボスの最終決戦は、凡百のSFのような物理法則を超えた物理的破壊合戦ではなく、なんと「議論」と「説得」なのである。相手との合意がなければ戦いは終わらない。そうでなければ「幸せ」になれないと主人公は考える。
 クールだったりユーモラスだったり哲学的だったりする言い回しは村上春樹を思わせもするのだが、にもかかわらず、ハルキ・ワールドの不健全さとはまるで違って、この小説では、どこまでもまっすぐでまっとうでまえむきな言葉が、陳腐で恥ずかしいと思うより、すがすがしくも感動的でさえあるのだった。

0 件のコメント:

コメントを投稿