2017年12月29日金曜日

『スクープ 悪意の不在』-社会派ドラマとしてよりもコンゲームとして

 この間は『チェンジング・レーン』で、役者として実に味わい深い演技を見たばかりのシドニー・ポラックの監督作品。
 どうもネットでは「マスコミによる報道被害をテーマにした」という紹介のされ方をしているが、いたずらにマスコミを悪者にすることなく、それなりに報道の倫理感を保障しているいるところがシドニー・ポラック作品だ。それをしないと安っぽくなるばかりだろうから。
 それよりも後半、マスコミと検察、警察を相手取って、被疑者とされた主人公が仕掛ける戦いが、コン・ゲーム・ストーリーとしておそろしく面白かった。そしてその決着をつけるべく開かれる予備審問(なのか、もっとうちうちの取引なのか)が白眉だった。ここは法廷物の面白さでもある。
 残念ながら字幕だけではニュアンスのわからないセリフも多く、すべての論理の組み合い方が把握できていないのだが、とにかくこういうのは、どこかの勢力を愚かにしたり悪者にしたりしてはだめなのだ。それぞれがそれぞれの職業の倫理と方法論を戦わせているからこその緊張感だ。
 残念なのは、吹き替えで見られなかったことだな。そのすごさを推測するばかりで、本当には充分に論理の綱引きが堪能できなかった。

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