2017年12月12日火曜日

『Oh Lucy!』-苦々なOLの冒険譚

 海外の映画祭でも高い評価を得たという平栁敦子監督映画だが、どういうわけで再編集してNHKでテレビ放送するのかわからない。宣伝として? 映画制作のドキュメンタリーにはできなかったのか?
 この形での鑑賞でまっとうな評価ができるのかどうか心許ないが、感想のみ。
 
 主人公のOLが、姪の頼みで通い始めた英会話教室で出会った米国人講師に恋して、米国まで彼を追いかける。
 冴えないオールドミスのOLのほろ苦い冒険、という体の物語なのだろうと見当をつけて観ていると、はたしてそのとおりなのだった。
 「体」としてはそのとおりであるにもかかわらず、残念ながら「ほろ苦い」とはいかなった。苦々だ。
 といって、観客の予断を裏切ることに何か価値のある要素があるかというと、どうもそうにも思われない。
 彼女の人生において数少ない「冒険」が、成功はしないものの、しかし何事かポジティブな影響を与えるという展開を期待していると、最後の役所広司の登場で多少救われもするものの、差し引きはマイナスなまま物語が終わる。どういうわけで主人公をそのようにして虐めたいのかわからない。それが狙っているものは何なのか。
 とりわけ冒頭の電車飛び込み自殺と、姪の唐突な投身自殺未遂は、そのエピソードが作る磁場の強さと、それ以外の物語の強さが釣り合っていないから、単に唐突で浮いている。そのことに仮にどんな狙いがあったとしても(本当にあったのか?)、成功しているとは思えない。
 観客になにがしかの勇気を与えるとかいう目的ではなく、単に批評的なのか?
 だが何に対するどのような批評になっているというのか?
 すべての物語がハッピーエンドでなければならないとは言わないが、それならば何を描きたいのかといえば結局わからず、もやもやと終わるのだった。

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