2018年12月27日木曜日

『モンスターズ 新種襲来』-誠実だが図式的

 宇宙から飛来した宇宙生物が地球環境に適応して「害獣」と化した世界を舞台とした「怪獣映画」の2作目。前作の南米から今作は中東へ舞台を移して、怪獣たちも適応による進化だか何だか、形態が変化している。
 前作が面白かったからもちろん期待は大きい。だが、始まってみるとギャレス・エドワーズが製作だとわかってアレッとなる。監督は別の人だ。トム・グリーンという新人監督は、後でディスク特典のスタッフ・インタビューを見ると、もちろん仲間褒めもあるが、とにかく誠実に作ったようだし、真面目な映画であることもよくわかる。
 シリアスな映画だ。怪獣映画とはいえ『トレマーズ』のような気軽なノリで見ていい映画ではない。
 というか、ネット評でも多く見られるように、これはもはや怪獣映画ではない。前作が怪獣のいる世界におけるロードムービーだったように、今作は戦争映画だ。そしてそれが、残念ながら前作のようには評価できない。
 第1作はロードムービーなんだから、怪獣と戦わなくてもいい。主人公は怪獣退治をしようとしているわけではない。だが2作目は登場人物たちが皆兵士で、武器を持っていて、それでも怪獣と戦うことがテーマでないのなら、何のために『モンスターズ』の続編である必要があるのか。
 もちろん何であれ面白ければ良いのだ。戦争映画として面白ければ良い。
 だが、結局この映画は「本当に恐ろしく愚かしいのは人間だ」と言っているだけだ。監督は、解釈は観客に任せるなどと聞いたようなことを言っているが、それほど深遠なことを言っているとは思えない。そしてそのテーマなりメッセージなりは、わかる。殊更にそう描こうとしているのが。
 だから怪獣映画にならない。怪獣退治の映画にならない。怪獣を挟んで、アメリカ対アラブの戦争が描かれる。
 怪獣という新たな自然環境に対して、それを「共生」とまでいかずとも、なし崩し的に受け入れようとするアラブと、人類に対する脅威として排除せずにはいないアメリカという図式も、それこそ図式的に過ぎる。といってそこから生ずるアメリカ対アラブという対立にリアリティを感じなかったのは、アラブ側の、怪獣を受け入れようとしている心情が語られないから、アメリカとの対立の双方の論理が飲み込めないからだ。
 むしろ現実の対立を前提に、ここではそれを怪獣をめぐる対立として跡づけようとして成功していないのだ。

 全体としてもどかしさから不満が先に立ったが、先述の通り誠実で真面目に作られていて、ドラマもシリアスだ。デトロイトという街の閉塞感が兵士の供給につながっているという現実の描き方も、戦場の狂気も、やはり図式的とはいえ誠実に描いている。技術的にも上手い。
 とりわけ巨大な怪獣が群れているラスト近くのカットは、戦争に対する絶望を象徴していると見做すだけでは惜しいほどの絶望感を感じさせた。

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