2019年12月26日木曜日

『監禁探偵』-物語構造の破綻

 我孫子武丸がシナリオを書いているマンガが原作なのだということは、観終わってから知った。
 前半は楽しいぞと思いながら見ていた。謎とサスペンスに満ちた矢継ぎ早の展開に加えて、監禁されている夏菜演じるヒロインが、「安楽椅子探偵」ならぬ「監禁探偵」として事件を推理しつつ、監禁している側の主人公との立場を逆転してむしろ優位に立っていく過程は、気の利いた会話とヒロインの魅力で、かなり楽しかった。
 前半の推進力は殺人事件の犯人が誰かという謎だ。そこに、さらなる推進力としての、明らかにダリオ・アルジェントの「サスペリア2」からの引用である、鏡に映る女がからむ。同時に殺された女の背景を探る、制限時間を設定された探索行動が物語を引っ張る。これらがどんな真相に収斂していくかと期待していると、まるで呆れた決着を見るのだった。女の背景が殺人事件に全く関わりがない上に、「鏡の女」の正体も、まるで唐突でなんの驚きもない(まるで何もないことに驚くくらいに)。この肩すかしは、ドンデン返しの快感というよりは、呆気にとられるばかりだった。これは完全に脚本の構造の破綻だ。「サスペリア2」もどきの犯人の設定も、オマージュだかリスペクトだか、そのわりに原作の精神をまるで表現していない無残なモノマネだった。
 夏菜が魅力的だっただけに残念。

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