『幸せのレシピ』からのレコメンドで浮上してきた。
観始めると、なんとも手際がいい。脚本も演技も編集もテンポが良くて、これは上手い映画だとすぐわかる。そのうちスカーレット・ヨハンソンは出るわダスティン・ホフマンは出るわ、なんだこれはメジャー作品なのかと初めて知る。観終わってから調べて『アイアンマン』の監督だと知ると、これは当然なのだった。
前半ももちろん面白かったが、後半の、息子が出続けるロードムービー展開が楽しい。いささかうまくいきすぎているとも思いつつ、ずっと幸せな気分でいられる。
そして、基本的な愉しさを支えているのは、主人公のシェフの明るい性格と裏腹なプロ意識だ。これが念入りに取材もリハーサルもされた見事な撮影とともに、確かなモラルとして画面に溢れているのが心地良い。
もう一つ、対立が対立としてバランスがとれているのも楽しく見られる大きな要因だ。
主人公と対立するレストランのオーナーとグルメ評論家が、どちらも単なる「敵役」として一面的に描かれるのではなく、十分にそれぞれの「理」があると思わせる人物像を実現しているのが好ましい。『新聞記者』などのような社会派映画こそそれをやってほしいというのに、「敵役」となればこれだ、というステロタイプが映画の質を落とすことなぜ気がつかない邦画やテレビドラマには、本当に残念に思う。
そのバランス感覚が、さりげなく描かれる職人の手際が実現した爽快な映画だ。
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