2022年1月26日水曜日

『(r)adius』-ジャンルの混交の失敗

 半径(=ラディウス)15m以内に入った生物は突然死んでしまうという設定は予告編から明らかにされている。後は主人公が記憶喪失らしいのも。

 原因が不明なのも不穏なのも、雰囲気はシャマランの『ハプニング』を思い起こさせるが、設定は『呪街』に近い。そんなマイナーな日本のマンガを、作者たちは知らないだろうが。

 さて、こういうワンアイデア(に見える)作品は、その可能性の徹底的な追究と丁寧な演出がものをいう。この設定から起こりうる事態をあれこれと想像して、それをドラマチックに見せる。そして、その渦中にいる人の振る舞いに合理性を持たせる。センスのあるカット割りなどできれば申し分ない。

 

 で、どうだったかというと、悪くない。面白い。薄暗い画面の不穏さも、事態を描写するカットも手際が良い。


 だが半ばまで観て、思いのほかイベントが起こっていないことに気づく。もっとさまざまな事態が起こる可能性を追求してほしいという不満を感じ始める。画面の手触りはよほど上質だが、物語的には『トロールハンター』と同程度の密度に感じられる。

 その後、最後近くなってイベントが起こり始めるのだが、これがなんとも予想外の方向で、しかし楽しくはない展開なのだった。奇妙なSFホラーだった物語が、最後になって急にサイコサスペンスになる。その必然性がまるでわからない。ジャンルの混交が、何か効果的に働いているという感じがまるでしない。どちらも中途半端になっているという感じしかしなくて、混交させる必然性が納得されない。

 終始狂っているような感じの『アルカディア』にはこういう不満を感じるわけではない。あれは本当にジャンルのわからない映画だった。それに比べて本作はもっと一般的なハリウッドエンタテイメントの手触りの映画だから、それを全うしていないことに不満を感じるのだ。どちらの要素もそれなりに悪くはなかったので尚更惜しい。

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