2020年7月2日木曜日

『ドント・イット』-売り方を間違っている

 『ドント・ブリーズ』と『イット』に乗っかって、ホラー映画として見せたいんだろうが、全く間違っている。そんな風に売ってしまえば、不評の嵐になるのは目に見えている。オカルトではあるがホラーではない(終わり近くにいくらかホラーテイストがあって、これはむしろこの映画の失敗でさえある)。
 ホラー映画を借りたつもりだったが、そうでなかったことに不満を言うつもりにはならなかった。
 子供を亡くした母親が降霊術を行う、というただそれだけを丁寧に描いた映画。
 だが、おもしろさはその手順が興味深いというよりむしろ、それを手助けする降霊術に詳しい中年男が胡散臭いことによっている。母親が、どこまで信じればいいのかに迷い続ける間、観客もまた、これがどういう映画なのかを疑い続ける。どのあたりに決着させるつもりなのかよくわからんのだ。
 感じの良くない人間でないのは確かだが、降霊術に関しては本物かもしれない。そう思って観ていると裏切られるエピソードも描かれる。
 「儀式」というものについての根本的な怪しさもある。その様式にはどんな合理的な理由があるのか? 説明ができなくても信じるしかない部分もあるんだろうが、伝承に伴う情報の歪曲だってあるだろうと思えば、そこをそのまま信じるべきか迷う。
 結局はオカルトなのだが、同時にそれは母親の内的なドラマでしかないともいえる。外的には何が起こったわけでもない、ともいえるからだ。

 淋しいイギリスの風景が全体に良い感じ。ヨーロッパ映画だなあ。
 そういう映画だと知らせて、それで観たい人に見せればいいのに。単なるB級ホラー映画だと思わせて、ホラー映画として面白いことを期待している人に見せるのは売り方が間違っている。

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