「マンハント」というジャンルがあると言われればそんな気はする。それにあたるものはいくつも見ている気はする。それを前提に、そのまま原題も『THE HANT』なのだった。途中に「荘園」と訳されている言葉が何度も口にされる。字幕版では「領地」だった。なるほど、奴隷制を前提とした私有地のことらしい。かつての格差社会を前提とした言葉が、今日の格差社会に対する批判的なガジェットになっているらしい。あきらかに左右対立、アメリカにおける共和党と民主党の支持者、労働者と支配層、ネット民と経済民の対立が背景になっている。
とはいえ、そういう社会風刺的な面よりも、素直に生命の危機に対する戦いのサスペンスと勝利のカタルシス、アクションの展開のスピード感が楽しめる映画だった。
そして何よりヒロインのキャラクターが秀逸なのだった。監督クレイグ・ゾベルの演出なのか主演女優ベティ・ギルピンの演技なのか、思い切りのよさと、どんなものなのかはわからないが何かの感情が強く動いているらしいことが同時に描かれる。終盤で笑ったときに、そこまではまるで笑っていなかったらしいことに初めて気づく。逆にそこまでは、ほとんど無理矢理とも言えるくらいに口をへの字にしているのだ。そのギャップが観る者の好奇心をかきたてる。こいつは何を考えているのかと注意を引く。基本的には生き残ることに貪欲だが、どうも単なる負けず嫌いもあるらしい。しかも強烈な。あるいは戦いの中で自分の能力が発揮されることに喜びを見出しているのか。
そんなふうに人物への好奇心がかきたてられつつ、応援し、その勝利に喝采し。
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