紹介から「ループ物」なのだとわかっていて観始める。最初のシークエンスの、「ばかっこいい動画」風の長回しが、もううまい。何度も繰り返しているから次の展開がわかって、そのタイミングで的確な動作をできるんだな、と観客は理解する。だが女の子をナンパするプールサイドでは、何度もそのタイミングをはかって試行錯誤を繰り返すシーンが描かれて、なるほど、こうしてそこまでの「ばかっこいい」も成功させてきたのかと納得する。
そこに、それまでのパターンになかった行動をとる闖入者が現れる展開の鮮やかさも見事。なるほど、もう一人のリピーターなのか。『エンドレス』の時は予告されていなかったからびっくりしたのだが、こちらは最初から男女二人がループの中にいると予告されているから、びっくりこそしなかったが、演出としては鮮やかだ。
かように、とにかく描写が巧い。脚本と演技と演出と編集がかみあって、ポップでエモーショナルな細部が詰め込まれている。街にはいろんな小さな「奇跡」が起こっているのだとわかって、それを探すシークエンスは、音楽の良さも相俟って、映画的な喜びに満ちていた。
物語はループを抜けたくないヒロインがどうやってそこを乗り越えて「明日」へ踏み出すかと、どうすれば抜けられるかの方策をさぐる試行錯誤が後半の展開で、主人公がヒロインとの関係をどう作るかがそれを貫いて描かれる。それぞれに細かい工夫が凝らされていて、丁寧な作りだと感心する。
挿入されるパロディに笑わされたりもするが、アメリカのサブカルチャーに詳しければまだ見つかっていないパロディもあるのかもしれない。
感触としては、ともかく愛おしい映画で、この愛しさは「終末物」における『エンド・オブ・ザ・ワールド』に匹敵するかもしれない。
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