2022年8月26日金曜日

『アフタースクール』-ミスリードとどんでん返し

 内田けんじの3作ではこれを最初に観た。『鍵泥棒のメソッド』でさえこのブログ開始時より前に観たものなので、いつだかわからない。とにかくミスリードとドンデン返しが見事な、恐るべき作品だと思った覚えはある。

 が、今回観始めてみるとどういう真相だったのか、ちっとも思い出せない。どうみても「ミスリード」されたまんまの凡庸な事件に見える。これがどうひっくり返るんだろうと思っていると、なるほど、ちゃんとひっくり返される。やはり見事で感心する。


 もう一つの感心ポイントは、あそこだよなあとは思っていたが具体的にどうだったのかは忘れていて、今回観てやはり感心した。

 ヤクザとも関係のある探偵が、人間の「汚い」部分を指摘して、大泉洋演ずる中学教師に向かって、学校という空間で過ごしてきたお前のような奴は人間がわかっていない、と言う。これに対し、教師は「お前には何があったんだ?」というだけで、はっきりした反論をしない。学校空間の甘さを指摘されてやりこめられているように見える。

 だがこれが物語の終わりに、事件が逆転した後で、今度は教師が探偵に、お前みたいな生徒はいっぱいいる、世の中がわかったような口をきくが、世の中がつまらないのは自分のせいだ、と言う。決して反論のために言い返しているというような調子ではない。だがこれは鮮やかな視点の転換で、カタルシスがあってなおかつ希望的な人生観を提示している。

 よくできていて感動的。内田けんじの3作はどれもそうだ。

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