監督のドリュー・ゴダードは「クローバーフィールド」の脚本家でもある。となれば大いに期待できる。
「マルチ・レイヤー・スリラー」というキャッチコピーで、『キャビン(原題は「森の中の山小屋」)』といういかにもな題名をつけているのも、最初からその「レイヤー」以外のレイヤーの存在を観客に知らせているのだった。
とりあえずは「山小屋にやってきた若者グループが次々と殺される」という、「よくある」レイヤーがある。
最初のうちはそのレイヤーでのみ語り進めるのかと思っていたら、そもそも映画の最初が別のレイヤーから始まるのだった。
冒頭は「CABIN」の方ではなく「謎の組織が登場人物を監視している」という、これも「よくある」レイヤーで、まあそこまでは公開情報なのだった。予告編で既にそれを見せているし。そこまでも「よくある」設定なのだった。
さらに上のレイヤーがあるらしいと知らされてはいる。
「神々」が「山小屋」のレイヤーの物語を見たがっている、などと言われているのだが、「古代の神々」という言葉だけは「よくある」ものの、それがどういう設定になっているのか、最後までわからない。神々はなぜそんな「ありがち」な物語を欲するのか。
どんな真相にたどり着くのかはともかく、どこもかしこもすこぶる楽しい。台詞といい演出といい、とにかく上手い。ホラーを観るつもりだったのに、そこら中で笑わされる。
もちろんさまざまなびっくり展開もあり、じっくりと怖がらせる演出もある。
そしてゾンビから逃げる主人公達を応援したくなるばかりでなく、謎の組織の仕事人たちもまた応援したくなるような仕事ぶりなのだった。
展開にひねりもあり、それが最後に向けて大盛り上がりを見せるのも大したものだ。
さてそのうえで、結末がよくわからない。
「古代の神々」というから、クトゥルー神話的な何かかと思った。それがどういうわけで「山小屋」もののホラー映画何か観たがるのか。
そして正体が何か示されはしない。
あれ?
なるほどあれは我々のメタファーなのだ。わがままな「観客」という名の「神々」。
そう考えればすこぶる納得のいく結構を備えた、すこぶるよくできた、すこぶる楽しい映画なのだった。
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