2014年12月6日土曜日

『ハルフウェイ』『大鹿村騒動記』

 この間『新しい靴を買わなくちゃ』を観たばかりの北川悦吏子の初監督作品『ハルフウェイ』。一家をなした脚本家が、こんな、何のストーリーもないお話を書いていいのかいなと、心配にさえなってしまった。というか、脚本があるのか? と思わせるほど、台詞がとりとめもない。手持ちカメラのブレも尋常じゃなく、どうやってこんな演出をしているんだろうと思って調べてみると、お芝居はアドリブなんだって。なるほど。それであの、書いたとは思えない、北乃きいと岡田将生のからみのお芝居が成り立っているのか(そしてそれをリアルタイムで追っているからのあのカメラのブレ)。
 そのままネットでみんなの感想を読んでみると、否定派の言うとおり北乃のキャラクターは考えてみればどうみてもウザイのだが、観ている最中に不快感はなかった。それよりもとりとめもなく描かれる二人のいちゃつきは、「新しい靴を買わなくちゃ」の桐谷美玲と綾野剛のからみが、ひたすら鬱陶しく、この二人のシークエンスがごそっとカットされればこの映画はどれほど良くなるかと思わせたのに比べて、ほとんど同じように見えてもおかしくない北乃と岡田のからみがそうは見えなかったのはこちらの偶々のコンディションなのか、田舎の風景の中におさまった高校生という図が救いになっていたからか。むしろネットのこんな大胆な感想に共感さえしてしまったのだった。
こんな初々しい青春あふれる学校生活が、将来の日本の希望につながるのではないか? 女子高生のすがすがしさ。ちょっと考えてみれば分かる。自分をとりまくおじちゃん、おばちゃん達の素朴さ。やはり、昔でもこういう健康的なラブストーリーを経験してきてるから、日本の年配の方々は強いのだ。またもっと言えば、誰にでも青春は来るのだ。それが若い頃じゃなくても。いじめや援交などの学校生活ばかりが映画化されるが、こういう映画こそ、生きる力のつく映画だと思う。
いやあ、相当数のバッシングもある中で、この肯定のシンプルさはすごかった。
 ついでに最近「昨夜のカレー、明日のパン」で見慣れているサラリーマンコンビの溝端淳平と仲里依紗が高校生で揃って出てきているのも不思議な感じだった。二人とも今では、この高校生役の輝くような魅力とはまた違った好感度でサラリーマンを演じている。
 編集も尋常じゃないとりとめもなさ(ストーリー上の意味付けや、カット同士の繋がり具合やカメラの視線の位置とか)だなあ、この味はなんだか覚えがあるぞと思っていたら、やっぱり岩井俊二なのだった。

 『大鹿村騒動記』は阪本順治というようり原田芳雄を観たくて観たのだが、何とも感想の難しい映画だった。阪本順治は『どついたるねん』と最近の『北のカナリアたち』しか観たことがなく、どちらも安っぽくはないが手放しで好きにもなれなかった。『大鹿村騒動記』もそうだ。なんだかこれを喜劇として笑う気にはなれないのだが、シリアス一辺倒のドラマとして作っているわけでもあるまい。この間の『孤独な嘘』と同じ、妻の不倫を夫が許すという構図を受け入れがたいと言いたいわけではない。そこは原田芳雄の人柄で、それもアリだと思わせてしまうところがこの映画の魅力なのかもしれない。大楠道代だって、『ツィゴイネルワイゼン』のあの人がこの歳になってまでこんな風に女を演じられることを素直に賞賛したいし、岸部一徳も大好きな俳優だ。それでも、たとえば「見所」ということになっている大鹿歌舞伎はどうとも感じなかったし、佐藤浩市や松たか子は完全に無駄遣いに思えた。冨浦智嗣のエピソードもまるで心を動かされなかった。
 でもなんだか、こんなつまらない感想はこちらの見方が悪かったような気もして、なんとなく居心地の悪い後味なのだった。

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