2020年3月9日月曜日

『ビヨンド・サイレンス』-基本的に良質なドラマ

 仕事終え、一山越えて解放された気分で早く家に帰り、長い宵を過ごして、平日なのに映画を一本。
 聾唖の両親の元に生まれて、音楽を志す夢と両親との関係の間で悩む少女を描いた、ドイツ映画。アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされていたり、東京国際映画祭でグランプリを受賞したりと、評価も高い。
 だが、ものすごく特別なものを観たという感じでもない。ヨーロッパ映画なのだと気づかないくらい、ハリウッド的な感触だし、特殊な題材を扱っているというわかりにくさがあるわけでもない、とても普遍的な感情のすれ違いと和解を描いたドラマだと思った。
 頑固と評される父親の屈折は、聾唖者故のものではあるが、理性的に振る舞っているだけに共感可能でもある。娘も家族故の愛情も気遣いもありながら、自分の夢を追うために反発もする。感情表現が細やかでドラマを享受する心地よさがある。
 主人公が世話になる叔母夫婦や、両親と叔母の関係などの描写にも、重層的なドラマが設定されている。
 最後のハッピーエンドまで含めて良い映画だったが、ヨーロッパ映画らしいわけのわからなさや、特別さがあるわけではない。

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