2020年3月15日日曜日

『THE TUNNEL』『The Good Fight』-あまりに高品質なテレビドラマたち

 今年に入ってからテレビで放送の始まった海外ドラマを二つ録画して観始めると、これがどちらも滅法面白い。
 『THE TUNNEL』は、フランス・イギリスの合作で、題名の「トンネル」というのはドーバー海峡を渡る海底トンネルのこと。トンネル内で見つかった死体に始まる事件を、フランス警察とイギリス警察が協力して捜査する。事件は全10話に渡って終始、先の見えない怒濤の展開を見せる。毎回驚嘆する面白さだった。
 展開の起伏と共に、ドラマの魅力となっているのは、フランス・イギリス双方の刑事二人のキャラクターだ。特にフランス側の女性刑事がアスペルガー症候群だという設定である。優秀で勤勉、だが他人はおろか自分の感情にも無頓着で、人情も解するイギリス側刑事とのコンビネーションが、次第に親密になっていく展開がしばしば可笑しかったり、終盤では感動的だったり。
 これがデンマーク・スウェーデン合作の『THE BRIDGE』のリメイクだというので、あれこれと仕事のなくなったこの週末にまとめて観てみた。全十話で9時間ほど。続けて観るとストーリーも頭に残ったまま続きが追えるのがいい。ちゃんとのめり込める。まあそれでも名前になじみがない分、誰のことだったっけ? というのがしばしばあったが。
 なるほど、ほとんどの魅力は原作にある。が、風景の広がりと淋しさや、事件の緊迫感、二人の交流の細やかさは、微妙にフランス・イギリス版の方が勝っている印象だった。
 だが、最後の最後、事件の結末となる最終局面の場面で、問題のアスペルガー症候群設定を使った伏線が見事に活かされた劇的な展開を見せるところは原作版の方が鮮やかだった。むしろリメイクはなぜそこを微妙に変えてしまったのかが疑問。惜しまれる。
 アメリカ版リメイクもあるというのだが、ヨーロッパ的侘び寂びがあるのかどうか。

 『The Good Fight』は、前作となる『グッド・ワイフ』を観ていないのだが、まあ独立した作品として観られるらしい。前作は題名から勝手に夫婦の人間ドラマなのだろうと思っていたが、実は法廷ドラマなのだそうで、本作は最初から法廷ドラマだと知って観始めた。
 これがまた毎回、驚くほどの面白さでシーズン1を終えた。法廷でのやりとりのスピード感と論理のぶつかりあいの緊迫感がすさまじい上に、微妙な感情の起伏が絶妙に描かれる。時に痛快だったり苦々しかったり。
 本当に見事な脚本と演出、俳優陣の演技だ。

 それにしても不思議なのは、どちらも、その脚本・演出・演技のレベルが、世に溢れる「映画」に比べても恐ろしく高いということだ。今年の映画を遡ってみても、ウィリアム・ワイラー、ポン・ジュノ作品と『マーガレット・サッチャー』くらいしか、匹敵するレベルの映像作品が見当たらない。
 このあたりのテレビドラマは、予算的にももう映画とかわらないと考えるべきなのだろうか。

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