2020年8月26日水曜日

『来る』-残念

 夏のホラー映画特集ということで。原作は面白かったし、『告白』の中島哲也ということでハードルが上がっているが果たして。

 残念なことに『告白』ほどの満足はなかった。
 最初のうちは、中島哲也の映像ってのはなんでこんなに高精細に見えるんだろうなどと感心していた。
 人の心の闇にやってくる化け物というコンセプトは原作通りで、映画は、妻夫木聡・黒木華夫婦の心の闇を描くことについては成功しているが、その分、化け物の描き方の方がおろそかになっていると感じた。怖くない。
 怖くないのはかまわないのかもしれない。ホラー映画をまともに作ろうとはしてないようでもある。松たか子が容赦なく岡田准一を殴り倒す唐突さには笑った。
 原作から離れた化け物退治の大がかりな仕掛けは確かに盛り上がった。映画のキャッチフレーズが「エンターテイメント」であるのはよくわかる。ただ楽しいだけの高揚感というだけではなく、呼び寄せたメンバーがあっさり殺されてしまうあたりのびっくりも悪くない。
 とりわけ、新幹線で現場に向かう術者たちが、気配を感じて急遽、新横浜やら品川やらで分散して降りることにして、「誰か一人でも着けばいいだろ」というようなことを言う、不気味さと日常の隣接した描写にはしびれた。
 いろんな宗教が混交したお祓いの儀式も、面白いと言えば面白い。
 だが、チームプレイが功を奏しているような様子が描かれるわけでもなく、壊滅状態になっていく際の緊迫感のなさも、残念だった。大がかりに準備した割に、お祓いとしての効果も、映画的な感動も、どう描こうとしているのかわからないのだ。
 同時にそのあたりで描かれるCGのチャチさも興ざめ。
 ハードルが上がってなければ、面白い映画であるとは言えるのだが。

 ところで、ホラー映画は定期的に観たくなるのだが、レンタル屋の棚を観ながら、これから観たいと思う映画があまりに少ないことをあらためて思い知った。とりわけ邦画に期待がもてない。ゴア・ムービーやスラッシャー・ムービーは観たくないので、それで選択肢が狭まっているとしても、残念なことだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿