2020年8月1日土曜日

『ブルー・マインド』-「真面目な」ホラー映画

 レンタル屋の棚から、その場で面白そうな物を選ぶ。大抵は海外の映画祭で何か受賞しているというような宣伝がジャケットに書いてある。そういうのが真に受けるに値するほど面白いものばかりではないが、地味に良い映画であることもままある。真面目に作られた小品であるような。
 スイスの映画賞で作品賞だというのだが、これもそういった作品だった。
 主人公の少女が人魚に変化してしまう、というホラーなのだが、恐怖を描こうという気は制作者にはない。怖くない。映画の中では本当に人魚になってしまうのだが、同時にそれは全く象徴であることがあまりに明らかだ。
 描かれるのはティーン・エイジャーの荒んだ生活であり、そこに惹かれていく主人公の変化である。人魚になることはその変化を象徴的に描いているのだが、丁寧に、真面目に、美しく描いているとは思ったが、結局のところ、彼女がなぜそんな風にはみ出してしまわなければならないのかがわからなかった。
 これがこちらの読解力不足なのか、映画の描写不足なのか、どうもわからない。
 タッチは好意的に受け止められるのだが、手放しで面白かったとは言えない。真面目な映画ではあるが、ホラー映画を作ろうという気がないのになぜホラー映画の形式をとるのかはついにわからなかった。

0 件のコメント:

コメントを投稿