2020年8月4日火曜日

『お嬢さん』-映画の力

 パク・チャヌク監督作ということで、この間の韓国映画特集のレンタルDVDの新作紹介で何度も観ていて、ようやく。
 エロチック・ミステリーというのだが、どこがミステリー? と思っていると、第一部の終わりで呆気にとられるようなドンデン返しとなる。それだけではなく、第二部ではそれをもう一度ひっくり返してみせる。なるほどミステリーだ。
 実は、といって真相を知らせる際に、前と同じ場面を、違った角度から違った意味合いで見せる。
 そもそも原作が創元推理文庫で「このミステリーがすごい」の1位だというのだから、話の骨格はミステリーとして間違いないのだった。
 だがそれだけではない、映画としての魅力に満ちている。…のだが、これがまた『渇き』同様、語るのが難しい。
 とりあえず舞台となる豪邸やら庭やら、映画として定着された画の美しさ、というのはある。美しいというと平板だが、それは現実の風景ではなく、「映画」の中の空間として感じられる、ということだ。自覚なしに作られた映画では、風景はそうは見えないし、ましてテレビの中の空間とは完全に違う。
 とりわけ、屋敷の地下室の広大な、書庫と併設された和室は、そこで繰り広げられる朗読会の怪しさと共になんとも印象的な空間だ。

 だが、こんなことしか言えないところが、語るに難しいパク・チャヌク監督作の面白さだ。
 映画としての力、などというのはあまりに雑なのだが、それが満ちているのは確かなのだ。

 エロチック要素は要るのか? というのがどうも腑に落ちないのだが、それを抜くと動機が弱くなるのでしかたないのだろうか。別にそこが映画の魅力を増しているとは思えないのに。

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