夏区切りで1年間に観た映画を振り返っている。
今期は間にコロナ禍のstayhome期間があったせいで、過去6年で最高本数の98本。
アマゾンビデオで選べるようになると、この先本数が増えるかも。
さてベスト10。順不同。
9/29『It follows』-サスペンスと映画的描写の確かさ
11/24『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』-どこもかしこも芳しい
5/12『Wの悲劇』-「青春」バイアス
8/6『なぜ君は総理大臣になれないのか』-問いが成立するためには
ポン・ジュノとクリント・イーストウッドはある程度まとめて観たのだが、その中でポン・ジュノは2本がベスト10級だった。それでも『スノー・ピアサー』あたりをそのレベルでは楽しめなかったとはいえ、基本レベルが高いのは間違いない。クリント・イーストウッドは『パーフェクト・ワールド』が感動的だったのだが、何だかすごいものを観たという印象は『チェンジリング』が圧倒的だった。
韓国映画は、パク・チャヌク監督作もすごかったのだが、どうも受け止めきれていない感じで評価が難しく、パク・チャヌクの職人的安定感とは全く違った『息もできない』の素直な「特別感」を評価しよう。
『It follows』と『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』はそれぞれ完成度の高さが印象的。もちろんまるで違う映画的「完成度」ではある。『マーガレット・サッチャー』は堂々たる大作ドラマ映画の完成度であり、『It follows』は低予算ホラーとしての完成度である。
『Wの悲劇』に思いがけず感動してしまったのは我ながら意外だったが、これは客観的評価とは言い難い。だが映画を観るということは、タイミングやシチュエーションも含めた「体験」なのだ。その体験において、今年はこの作品を観たときの陰影のある気分を10本に挙げたい。
体験ということでは、映画館で観る映画は特別なものになりやすく、昨年のベスト10には3本も映画館で観た映画が入っていた。今年でいえば『パラサイト』と『なぜ君は総理大臣になれないのか』だ。『なぜ君は』は鑑賞中も楽しく感動的で、観終わってからもあれこれと関心が現実に関連する。特別の鑑賞体験だった。
『ブリグズビー・ベア』は、前年度ベスト10の『ルーム』と比較してしまうから小粒感があるのだが、素直な多幸感とともに、一筋縄ではいかない不思議な味わいもあるようで、この分析はしきれていない。
迷って落とした次の10本。
12/7『JOKER』-予想を超えない
3/1『友だちのうちはどこ?』-構成も描写も見事な
5/2『Trance』-あらためてダニー・ボイルの実力の高さ
5/5『エスター』-恐怖の並べ方と見せ方
5/22『ヴィクトリア』-全編140分間ワンカット
6/6『パーフェクト・ワールド』-閉ざされた世界への絶望と憧憬
7/11『ミッドサマー』-奇妙な決着
8/4『お嬢さん』-映画の力
8/12『パトレイバー the movie』-大いなる希望
8/29『最強のふたり』-最強の多幸感
大作としての堂々たるレベルの高さを感じる作品が多いが、『エスター』はホラー映画としての愛おしさから選んだ。
『ヴィクトリア』は超低予算映画だが、これは映画鑑賞が特別な体験であるような一夜の鑑賞として印象に残った。
『パトレイバー』は何度も観ているが、10数年ぶりに観て、やはり邦画全体のベストを選んでも挙げるべき特別な作品だと思い知らされたので。
全体としてここ1年で最も印象的だった映画鑑賞体験は『HAPPY HOUR』の5時間を超える視聴だった。何か、特別な体験だったという印象のある5時間余りだった。
しかしまたこの感じがどこから生じているかが、どうにもわかりにくいのだ。
以下、観た映画を列挙する。
9/11『ポノック短編劇場 ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』-山下明彦作品のみ
9/12『牯嶺街少年殺人事件』-「名作」がわからない
9/23『マッチポイント』-人間ドラマとして感情が動かない
9/28『ボーン・レガシー』-すごい創作物
9/29『It follows』-サスペンスと映画的描写の確かさ
10/3『花とアリス殺人事件』『花とアリス』-横溢する映画的魅力
10/5『ブレード・ランナー』『デンジャラス・デイズ』-映像と物語の落差
10/14『トーナメント(原題「Midnighters」)』-小品として満足
10/17『エスケープ・フロム・LA』-B級の味わい
10/31『バットマン vs スーパーマン』-「スーパーマン」映画の不満
11/6『ドリーム・キャッチャー』-意外と好きな人が多いらしい
11/13『Get out』-受け止める姿勢作りに失敗
11/15『金融腐食列島 呪縛』-クオリティは高いが満足度はいまいち。
11/18『パズル』-ありがちなビデオスルーのホラー
11/24『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』-どこもかしこも芳しい
12/7『JOKER』-予想を超えない
12/8『バトルロワイヤル』-やはり良さがわからない
12/11『人狼ゲーム インフェルノ』-期待には届かず
12/15『サクラダリセット 前後編』-まあこんなもん
12/17『死の谷間』-静かな週末物語
12/18『新感染』-健闘の韓国産ゾンビ映画
12/25『監禁探偵』-構造の破綻
1/2『WASABI』-際物
1/2『殺人の追憶』-唸るほど面白い
1/6『スノーピアサー』-全体に「噛み合わない」
1/19『幕が上がる』-悪くない青春映画
1/20『スマホを落としただけなのに』-成田凌の快演だけは
1/25『ラストサマー』-薄味
1/31『十二人の死にたい子供たち』-様々な可能性が開花しない
2/2『ラストサマー2』-ますます薄い
2/7『カウボーイ&エイリアン』-ツッコミどころしかない
2/8『翔んで埼玉』-相性の問題
2/9『37 Seconds テレビ版』-優れたドキュメンタリーにも似た
2/11『十三人の刺客』-名作の名に恥じない
2/17『パラサイト 半地下の家族』-凄いに決まっている
2/18『グッモーエビアン!』-これが大泉洋
2/23『地下室のメロディー』-完成度の高さは折り紙付き
2/24『情婦』-有名なネタバレ禁止映画
2/29『絞死刑』-構造的不可能性
3/1『友だちのうちはどこ?』-構成も描写も見事な
3/9『ビヨンド・サイレンス』-基本的に良質なドラマ
3/15『THE TUNNEL』『The Good Fight』-あまりに高品質なテレビドラマたち
3/15『月に囚われた男』-オールドファッションなSF映画
3/21『君に読む物語』-感動的でもあり気持ち悪くもあり
3/22『インデイペンデンス・デイ リサージェンス』-同工異曲の縮小再生産
3/27『フライト・ゲーム』-怒濤の展開
3/29『桜桃の味』-フレームがわからない
3/29『Bigger Than Life(黒い報酬)』巨匠のハリウッドエンタテイメント作品
4/2『HAPPY HOUR』-5:17の至福
4/4『アウトロー ジャック・リーチャー』-楽しみ方をはずした
『トラフィック』-手堅く立体的に描かれる
4/5『夜明け告げるルーのうた』-イマジネーションの奔流
4/10『思い出のマーニー』-良い映画であることを妨げる要素が多い
4/12『リメンバー・ミー』-脱帽
4/20『パーフェクト・プラン』-小品として観るならアリ
4/22『ダカタ』-抑制的でいて切ないSF
5/2『Trance』-あらためてダニー・ボイルの実力の高さ
5/3『ジュリアン』-えっ、これだけ!?
5/4『蜘蛛の巣を払う女』-最高評価
5/5『エスター』-恐怖の並べ方と見せ方
5/9『母なる証明』-「変」であること
5/10『トレイン・ミッション』-ちょっと残念
5/12『Wの悲劇』-青春バイアスによる名作
5/14『殺人の告白』『22年目の告白』-一長一短
5/16『哭声-コクソン』-リアリティの水準
5/21『息もできない』-全編に満ちる切迫感
5/22『ヴィクトリア』-全編140分間ワンカット
5/24『渇き』-語るのが難しい面白さ
5/27『ジャケット』-カタルシスにつながらない
5/31『君の膵臓を食べたい(アニメ)』-「物語」の効用
6/6『パーフェクト・ワールド』-閉ざされた世界への絶望と憧憬
6/6『エヴァンゲリオン新劇場版Q』-やっぱり
6/7『チェンジリング』-盛り沢山
6/9『グラン・トリノ』-映画的愉しさに満ちている
6/14『ジュピター』-スケールについていけない
6/14『Bound』-身の丈にあった良作
6/19『老人と海」-眠気に堪えて
6/21『ハートブレイク・リッジ』-達者なエンタテインメント
6/28『ファイアー・フォックス』-程度の適正がわからない
7/2『ドント・イット』-売り方を間違っている
7/4『めまい』-よくできたサスペンスだが
7/5『ハリーの災難』-アンバランス
7/11『ミッドサマー』-奇妙な決着
7/19『海底47m』-シンプル
7/23『翔んだカップル』-普通なスターというアンビバレンス
7/25『怪物はささやく』-高いレベルの画作り
7/26『ジュラシック・ワールド/炎の王国』-毎度
8/1『ブルー・マインド』-「真面目な」ホラー映画
8/2『ブリグズビー・ベア』-成長を描く多幸感
8/4『お嬢さん』-映画の力
8/6『なぜ君は総理大臣になれないのか』-問いが成立するためには
8/11『MEG ザ・モンスター』-アンバランスの失敗と成功
8/12『パトレイバー the movie』-大いなる希望
8/16『トゥモローランド』-良い狼に餌を与える
8/18『ヘレディタリー 継承』-ホラー映画におけるカタルシス
8/21『FAKE』-これもまた一つの
8/26『来る』-残念
8/28『マーガレット・サッチャー』-再び
8/29『最強のふたり』-最強の多幸感
8/30『V/H/S』-工夫が足りない