2020年5月22日金曜日

『ヴィクトリア』-全編140分間ワンカット

 全編140分間がワンカットだという。
 長回しといえば『トゥモロー・ワールド』が6分台、『ラ・ラ・ランド』の冒頭のハイウェイのシーンは4分台だそうだが、これはいずれも編集でつないであるので、撮影上はワンカットではない。
 邦画では『カメラを止めるな』の37分があるが、これはその後との対比が狙いでもあり、長いことに必然性がありつつ、そこまでで終わることにも必然性があった。
 それが、全編ワンカットで、しかも編集でつないでいるわけではない、本当の長回しである。しかも映画全体が長めの140分。
 もうその興味で観てみる。
 こういう映画だから、なるべく途中で切らずに見切ってしまう。
 さて、最初の3分の1は正直退屈でもある。ワンカットで描くからこその必然と思いつつももどかしい。いくらなんでもダラダラしすぎでは? とも思うのだが、半ば過ぎからは話のテンポも上がって退屈しない。

 こういうのはとにかくアイデア勝負だ。正直なところ、もうちょっと展開上、演出上に工夫がほしいとも思ったが、それは贅沢な期待でもあり、全体としては、途中にがっかりするような点があるわけでなし、とにかくよく作り終えたことに感心する。
 そして長回しの狙いである没入感や臨場感はもちろんある。
 そのうえで、リアルタイムのこの時間経過のうちに起こったことを思い返すときの異様な長さも面白い。
 最後のたっぷりの激情の後、フォーカスが絞られていないところから、主人公の顔にアップに向かってピントがあっていくところの演出などは、素直に映画的に優れているとも思う。

 ところで、カメラがやたらと揺れるところも、手作り感満載なところも、無軌道な若者の切迫感も、なんだか妙に『息もできない』と並んでいる偶然が不思議。

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