2020年5月5日火曜日

『エスター』-恐怖の並べ方と見せ方

 前から評判をきいて、興味を持ってはいたのだが、最近観た『フライト・ゲーム』のジャウム・コレット=セラ監督の初期作だと知って、この際見ておこうと。
 孤児院から引き取ってきた少女が実はサイコで…という大筋はわかっているので、後はエピソードの並べ方と見せ方だ。
 サイコ物は枚挙にいとまないが、印象の似ているのは『Visit』あたりか。だが『Visit』は大きなドンデン返しが用意されていることと姉弟のキャラクターがユニークなことが大きな魅力になっているので、その分は本作よりも楽しむ要素は多い。
 とはいえ肝心のサスペンス要素は決して負けていない。恐怖の積み重ねも、最後に、解決したかと思ったらもう一回、みたいなお約束も、全体によくできていた。楽しい映画だった。
 まあ、とにかく裏はない。予想もしなかったことが起こるわけでは決してない。
 それでも恐怖を盛り上げるポイントの一つは、少女が決して邪悪で狡猾なだけではなく、本人が自分を抑えきれない不安定さをもっているという描写がされていることだ。自分の正体がばれそうになる危険が迫ったときに不安でトイレの中で壁を蹴るシーンなどは、観客をも同じように不安にさせるものだ。
 
 全体に完成度が高く好印象な中で、残念な点を挙げるなら、少女の正体がわかるのが、ちょっと早過ぎると感じた点と、父親があっさり殺されすぎるという2点か。まあそこが「並べ方と見せ方」だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿