2020年5月3日日曜日

『ジュリアン』-えっ、これだけ!?

 TSUTAYAの棚を見回すと、なんとか国際映画祭で高く評価された、とかいう宣伝がやたらと目につく。それもビデオスルー作品だったりする。そういうのは吹き替えもなかったりする。
 これもそういうのだが、Rotten Tomatoesで95%の高評価とか(「Trance」でも60%台だというのに!)フランスでは40万人の大ヒットとかいうので借りてみる。
 両親の離婚後、主人公の少年ジュリアンの親権をめぐる裁判所の調停から物語が始まる。ジュリアンの申告書によると、彼も姉も父親が大嫌いで会いたくないというのだが、もちろん調停にあたって父親側の弁護士が語る人物像は大分違う。観客はどちらかまだわからないから、これから、多角的な視点から、自体の微妙さ、複雑さが描かれるのかと思う。
 が、わりあい早い段階で、ジュリアンの言うとおりであるらしいことがわかる。父親は確かに子供を愛してもいるし、別れた妻にさえ執着している。そしてなおかつ自分の怒りを抑えることができないらしい。
 人物像はまあそうであるにしても、これから複雑な展開を見せるのだろうと思っていると、要するに父親が母親と子供たちのアパートに猟銃を持っておしかけ、警察に取り押さえられる、というそれだけの展開を見せて終わる。呆気にとられるような、あまりにあっさりした物語展開なのだった。
 えっ!? これであの高評価?
 演出も演技ももちろん悪くない。終盤の緊張感は高い。ただ、とにかく物語があまりにあっさりと「それだけ」なのだ。
 DVやら、親権をめぐる裁判所の介入のあり方やら、社会問題を扱うシリアスさから、ネットの扱いも極めて真面目だが、あまりにも工夫のない物語展開に、とうてい高い評価をする気にはなれなかった。

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